彼女の夫 【番外編】あり
羽田空港の国際線ラウンジで、高澤と待ち合わせる。

プライベートの旅行ではないこともあり、さすがにひとりきりというわけにはいかず、高澤を同伴することにした。

「社長、まだ時間がありますし・・少し飲みますか? 何かもらってきます」

「高澤、ここで『社長』はやめないか? 悪目立ちするだろ」

「えっ、あー・・そうですね。しかし、何とお呼びすれば良いのか」

「別に『服部さん』でいいだろ。なんなら『玲生さん』でも『玲生』でもいいぞ」

プルプルと首を横に振る高澤に、思わずプッと吹き出した。

あ・・。
笑ったのは、いつ以来だろう。

ラウンジのバーカウンターで、軽めのカクテルを2杯オーダーして高澤に差し出す。

「高澤社長、1杯いかがですか?」

「もぉー、やめてくださいよ。冗談キツイですって!」

「アハハ。高澤・・悪かったな、急な海外出張に付き合わせて。向こうで、ウマいもんでも食おう」

「とんでもない。お供させていただけるなんて、本当に光栄ですから。向こうには学生時代の友人もいますし、何かあれば人脈フルに活用します」

高澤とグラスを合わせ、出発まで他愛のない話をした。
聞けば、ロサンゼルスには度々足を運んでいるという。

気分転換に、街を案内してもらうか・・。
そんなことを考えながら機内に入り、出発して早々に横になって目を閉じた。


< 49 / 109 >

この作品をシェア

pagetop