彼女の夫　【番外編】あり
久々の海外は、考えていたよりもずっと居心地が良かった。
耳に届く英語も、肌に感じる風も、俺を『普通の男』でいさせてくれる。

到着の日とその翌日はフリーにしてもらった。
もう少し、気持ちを整理する時間が欲しかったから。

到着の日は時差の調整のために街を歩いたり、現地のバーで高澤と飲んだりした。

翌日は高澤と別行動にして、俺はレンタカーを借りて海沿いに向かう。
左ハンドルと車線の違いに最初は戸惑ったものの、空の青と海の青が目に鮮やかに映った。

「あ〜、気持ちいいな〜〜」

クルマから降り、伸びをする。
波打ち際まで歩いて行きサングラスを外すと、太陽を反射した波がキラキラと眩しかった。


デッキチェアに座り、ぼんやりと水平線を眺める。
頭を空っぽにしたいと思いつつも、やはり彼女のことが頭に浮かんだ。


彼女は････どういうつもりだったんだろう。


俺は、彼女を愛していた。
一緒に過ごす時間が、永遠に続けばいいと思った。

でも、そういうわけにはいかなかった。
彼女は、俺以外の誰かのものだったから。


もう少し･･かかるな。
ようやく事実をそのまま受け止められるようにはなったものの、思い出にするには時期尚早すぎる。


「よし、帰ろう」

デッキチェアから立ち上がり、クルマに戻る途中で女性が座り込んで足をさすっているのが見えた。
転んだのか･･？

「大丈夫ですか？　じゃなかった･･Are you･･」

そう話しかけた俺に、女性は顔を上げた。


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