彼女の夫 【番外編】あり
地位や名誉・・か。

軽いものだとは思っていないものの、俺が思う以上に周りは重く見ていることを実感した。

「それでも・・・・。
そうだとしても、私は、蒼と歩く未来を選択してもいいでしょうか・・」

「服部さん・・」

「もう、彼女のいない人生は考えたくない。
ロサンゼルスに行く前、私は社長を退任してでも彼女と一緒にいたいと家族に伝えました。そうすることが全てではないと理解していますが、そういう気持ちでロサンゼルスに行ったんです」


顔を見て。
声を聴いて。
髪を撫で。
肌に触れて。

好きだと伝えて。
愛していると囁きたい。

ただ俺が、そうしたいだけ。
そうしたいと心から思う女性に、出逢ってしまったのだ。


「彼女を・・蒼を、愛しています」


ふぅ、と彼女の母親はため息をついて微笑んだ。

「自分の娘だけど、なんだか羨ましいわね。あなたみたいな男性に、そこまで言ってもらえるなんて。
『良くできた社長夫人』には到底なれないだろうけど、いいパートナーくらいにはなれるかしらね」

「はい。それもそうですが、父が彼女を主治医にすると言っていますから『社長夫人』より、そちらの方が安泰かもしれません」

「まぁ。そうかもしれないわね、ふふふ」

「ロサンゼルスから彼女が帰ってきたら、病院近くのマンションで一緒に暮らします。いつでも、遊びに来てください・・彼女も喜びます」

これから住む予定のマンションや、彼女が勤務予定の病院の話をしながら30分ほどお茶を飲み、『次は蒼と3人でね』と言って彼女の母親は帰って行った。


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