彼女の夫 【番外編】あり
マンションの契約から数日が経ち、インテリアが整ったと連絡があった。

彼女の希望を反映して・・と考えていたものの、置きたい家具や色・材質には特にリクエストが無かったから、コーディネーターにいくつか提案してもらった中から採用した。

「へぇ・・いいですね、画像で見るより落ち着いた感じだ」

「そうですね。いくつかいただいたご希望も全て取り入れてありますので、気に入っていただけるかと。婚約者の方、まもなく海外から戻られるとか・・」

彼女の希望は実用的なものばかりだった。

夜勤前後にしっかり眠れるように、寝室のカーテンは光を通さず壁が防音であることや、医学書がたくさん置ける本棚とデスクとチェアのセットを置くスペースが欲しいと言ったくらいで。

それらは俺にも必要だったこともあり、質のいいものを手配してもらった。

「ありがとうございます。ここで暮らすのが楽しみだ」

「ところで、その方はドクターですか? このマンションにお住まいのほとんどの方はドクターだと聞いています」

「そうですよ。ロサンゼルスのメディカルセンターで内科医をしています。明後日には帰国して、来週からはこの先の総合病院で勤務予定です」

「そうでしたか・・、お忙しくなるでしょうね。外国人の患者がかなり増えて、対応に苦慮していると聞いていますし。
それでは、追加等ありましたらご連絡ください」

だとしたら、徒歩10分圏内のマンションにしたのは正解だった。
いいところね、と彼女は褒めてくれるだろうか。


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