彼女の夫 【番外編】あり
空港の展望デッキでプロポーズする計画は、変更を余儀なくされた。

どうしようかな・・。
ポケットの中の小さな小箱を、指でさすりながら考える。

できれば、ふたりの新居で暮らす前に伝えたい。


「玲生さん、お待たせ」

小さめのボストンバッグを片手に、彼女が戻ってきた。

「お疲れさま。メシは? 機内食は食べてきた?」

「うん。食べてる途中で出動する羽目になったけど」

「何か食べるか? どこか寄ろうか」

「ううん。ちょっと疲れたから、もう休みたいかな」

彼女と手を繋ぎ、病院のエントランスに向かった。
夜間通用口はエントランスの少し先にある。

誰もいないロビーを横切ろうとした時、ふと考えが浮かんだ。


ここじゃ、ダメだろうか・・。


大きな窓から月明かりが差し込み、ロビーの端はほんのりと明るかった。
夜空を見上げると星も出ていて、幻想的な雰囲気もある。

俺は彼女の手を引き、立ち止まった。

「玲生さん? どうしたの?」

「ね、蒼。ちょっと椅子にバッグを置いて、俺の方を見て」

彼女は不思議そうな顔をしつつも、俺が言ったとおりにバッグを置き、こちらを向いた。



「蒼、俺は蒼を愛しています。この先の未来を、蒼と一緒に歩きたい」



俺は、ポケットから用意した小箱を取り出し、開けて彼女に差し出した。


「え・・・・?」



「蒼。俺と、結婚してもらえませんか」



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