悪役令嬢に転生したのですが推しのイケオジ騎士様(モブキャラ)と恋に落ちるルートはどれですか!?
 夕日の照らす廊下を駆け抜け、中庭を横切り、学校の寮まで走った。
 走りながら、この5日間のことを考えた。

 さっさとブラン様に、自分の思いを伝えればよかったんだ。
 なのにマリーに遠慮して、言えなかった。

 ――違う。マリーに遠慮していたんじゃない。
 4日前、廊下でレオンにされた、あのキスの意味を考えて言えなかったんだ。

 驚いたけど、嫌じゃなかった。
 もしかして、なんて、期待したりした。

 けれど、手の甲に何度もキスは受けている。
 きっとあのキスも、レオンなりの気遣いの、敬愛のキスだったんだと思う。

 マリーとレオンが幸せになるんだ。
 あんなにレオンを思っているマリーだ。
 二人が、お似合いなんだ。

 どう転んだって、私は悪役令嬢に成り下がるしかない。
 だったら、悪役令嬢になる前に、自分の推しとさっさとこの国からおさらばすればいい。

 そうだよ。
 私の推しは、金髪蒼眼の王太子じゃなくて、無骨な筋肉男子なんだから……!

 あの筋肉に抱きしめられたら、どうなってしまうのだろう。

 ほら、ドキドキしてる。
 私は、ブラン様が好きなんだ。

 それに、マリーは健気ないい子だ。
 私は、せっかく仲良くなってくれたマリーを裏切れない……っ!

 寮の前で、私は足を止め呼吸を整えた。
 胸に手をあて、一度深呼吸をする。

 この時間なら、きっとレオンはガブリエル王子とラウンジでお茶をしている。
 だから、きっとそこにブラン様もいるはず……っ!
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