悪役令嬢に転生したのですが推しのイケオジ騎士様(モブキャラ)と恋に落ちるルートはどれですか!?

嵐の前触れ

 ◇◇◇

 突然、ガブリエル王子が部屋にやって来た。
 先ほどまでベッドに突っ伏して泣いていた私は、腫れぼったい目をしている。
 それを彼に見られるのが恥ずかしくて、顔を伏せたままお茶を淹れた。

 ソファに座っているガブリエル王子は、どこかそわそわしていた。
 私がブランに告白したことを、彼は知っているらしい。

 彼は、レオンとも仲が良い。
 だから余計に、落ち着かなくなる。

 きっと、説得しに来たんだ。
 一時の気の迷いだとか、何とか言って。

 淹れたての紅茶をガブリエル王子の前に置くと、王子然とした笑みを向けられた。

「ありがとう、婚約者ちゃん」

「私の名前はエレーナです」

 レオンの婚約者であることを否定したくて、つい言ってしまった。

「でも、君はレオンくんの婚約者だ」

 そう返されて、ぐうの音も出ない。
 押し黙り、またうつむいた。

「すみません……」

 胸の奥から熱いものがこみ上げて、また目頭をじわんと濡らす。

 裏切られるのに、婚約者なんて……。

 切なくて、苦しい。
 本当は気付いている。
 この気持ちの正体に。

 でも、だからこそ。
 私が好きなのは、ブラン様。それでいい。

「ブランのこと、本当に好きなんだね」

 ガブリエル王子の声は、優しい。
 涙声になった私の声を聞いて、そう思ったらしい。

 両拳を握りしめて、私はこくりと頷いた。

 すると、ガブリエル王子はゆっくりと口を開いた。
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