「先生」って呼ばせないで
立ち上がってフェンスの外へ出てきてくれる廉くん。


「あの…この前はごめんなさい」


深々と頭を下げる。


本当に本当に申し訳ないことをしてしまった。


恋愛事情を軽くイジっただけのつもりだったけど、まさかあんなにツラい過去を抱えているとは知らず、廉くんのことを傷つけてしまった。


「場所変えよっか。おいで」


廉くんの後を追い、着いたのは部室棟の裏。


今はどこも部活中だから近くには誰もいない。


「今日ずっと何か言いたそうだったのはそれ?」


「気づいてたの?」


意地悪な顔だ…。


声かけるタイミングめちゃくちゃ計ってたのに…。


「顔に書いてある。俺の夏音のこと、聞いたんだろ?で、イジったことを後悔してる。俺と2人で話せるタイミングを探してるんだろうなーって思って見てたよ」


「気づいてたなら声かけてよ…」


「放っといたらどうなるかな?と思って。まさかテニスコートまで来るとは思わなかったけど」


意地悪だ…。


でも、それくらいされても文句言えないくらい廉くんのことを傷つけた。


「本当にごめんなさい…。嫌な思いさせちゃって…本当にごめんなさい」
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