「先生」って呼ばせないで
「別に、知らなかったんだからしょうがないじゃん。それに、担任の恋愛事情をイジってくる生徒なんて今までに何人もいたし。いちいち気にしない」


「でも…。ごめんなさい」


「もういいよ、大丈夫。怒ってないし、嫌な思いもしてないから」


ぽんっぽんっと優しく頭を撫でてくれた。


「…夏音がどうやって自殺したのか聞いてる?」


「そこまでは…」


思ったよりにこやかで、過去は過去と割り切っているかのようなトーン。


でもそれが見せかけのトーンなのか、本心なのかは私にはわからない。


「飛び込み自殺だった」


飛び込み……。


「あの日は久しぶりに早く帰れる日で、1ヶ月休みがなかったからとにかく早く家に戻りたくて。急いで駅に向かったのに、人身事故で電車が止まっててさ」


…それって…。


夏音さん……?


「“なんだよ、だりーな”“死ぬなら一人で死んでくれ、迷惑かけるな”って。その時思った」


…廉くんは廉くんで、仕事が忙しくて1ヶ月休みがなくて。


久しぶりに早く帰れると思ったら、人身事故に巻き込まれて帰れず…。


そんな状況じゃ、そう思ってしまっても無理ないよね…。
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