「先生」って呼ばせないで
「…お前も大変だな」


ボソっと廉くんが呟いた。


「え…?」


「いや、夏音も同じような苦労をしてたなと思っただけ」


それだけ言って私の反応は待たず、早足に職員室に戻っていってしまった。


夏音さんは廉くんの1つ下。


ちょうど私と遥斗先輩の年齢差と同じだ。


「乃蒼ちゃん!行こっか!」


遥斗先輩の明るい声で現実に引き戻される。


「あっ、はい!」


女子の視線から逃げるように教室を出て、遥斗先輩と合流する。


「乃蒼ちゃん、ずいぶん伊吹先生と仲良いんだね」


「えっ?」


遥斗先輩が眉尻を下げて私を見てくる。


「前、頭ポンポンされてたっしょ。それに今日だってすげー距離近かったし」


頭ポンポン…?


あっ。


あの時、見られてたの…? 


「正直妬いちゃった」


っ!?


遥斗先輩が…!?


「えっ、いやっ、あっ、あの!別に私と廉く…伊吹先生はそんな仲じゃ…、なんていうか、ちょっと仲良いけど、そんな大したことないっていうか!その、あの、ほんとに、私は…!」


勢い余って“遥斗先輩が好き”まで言いそうになってしまった!!


危な!!


「ほんと、れ…伊吹先生のことは何とも思ってないんで!」


「ほんと?よかったー」


これってこれって、遥斗先輩が私のこと…好いてくれてるってこと??


勘違い…かな…?


舞い上がりすぎちゃダメだよね!
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