「先生」って呼ばせないで
第1章
先輩
「っ!!」
数年ぶりの懐かし夢を見て飛び起きる。
「…廉くんの夢…。急にどうして思い出しちゃったんだろう」
私…一宮乃蒼(いちみやのあ)には、怜(れい)という名前の8つ上のお兄ちゃんがいる。
そのお兄ちゃんには、赤ちゃんの頃から一緒に育ったらしい幼なじみがいた。
名前は伊吹廉(いぶきれん)。
お兄ちゃんと廉くんは大の仲良しで、よく家に遊びに来ていた。
廉くんはよく私の遊び相手をしてくれていて、優しくて頼もしい存在だった。
そんな廉くんは、私の初恋。
恋心に気づいたのは小学4年生の頃。
廉くんは高校3年生。
相手にされる歳じゃない自覚は当時からあったし、憧れと恋心の区別ができていなかっただけだろう、と今では思っている。
それでも、廉くんの一挙手一投足にキュンキュンしてたのは本当だし、廉くんに彼女がいたことがショックで寝込んだのも事実。
叶いもしない初恋。
今となっては甘くて苦い良い思い出だ。
お兄ちゃんと廉くんは高校を卒業してから別々の進路に進んだ。
お兄ちゃんは地元の大学に、廉くんは地元を離れて都市圏の大学に進学。
それっきり私は廉とは会っていない。
会わないまま、7年が過ぎようとしていた。