「先生」って呼ばせないで
「三笠の試合、見ていく?それとも帰る?」


「廉くんが一緒に見てくれるなら見ようかな」


「それは無理」


「わかってるよ。そのまま帰るってこと」


「分かりづらいな。最初からそう言え」


今日テニスを見るのはやめておいたほうがいい。


大森や梓のこともあるし、ここには長居したくない。


せっかく誘ってくれた遥斗先輩には申し訳ないけど、やっぱり無理だ。


私はテニスが怖い。


「廉くん。今日は本当にありがとう」


門が見えてきた頃、心を込めてお礼を述べる。


本当に本当に感謝している。


「うん。話したいことがあるなら、LINEでもいいし電話でもいいし、急ぎじゃないなら月曜の放課後でもいいし、いつでも聞くから」


「電話してもいいの?」
 

廉くん嫌がりそうなのに。


連絡先ゲットできただけで奇跡みたいなのに、電話の許可までもらっちゃっていいんだ。


「今回だけな。それ以外で掛けてきても出ないから」


「なんだー、残念」


とかいって、なんだかんだ出てくれそうなのが廉くんなんだけどね。


「とりあえず、大会が終わったら連絡するから。そのあと話はいくらでも聞く」


「うん。ありがとう」


門までの道はあっという間だった。


車のドアが開き、心配そうなお兄ちゃんが降りてきた。
< 75 / 129 >

この作品をシェア

pagetop