「先生」って呼ばせないで
「先生の車、カッコいいですね」


「だろ?一目惚れして、超頑張って買った」


先生は嬉しそうに笑いながら助手席のドアを開ける。


「あ、ラケットや鞄があるから後部座席でもいいですか?」


「ラケットと鞄だけ後ろ置いとけばいいじゃん」


私の返事を待たず、ラケットと鞄を後部座席に乗せる。


「ほら、早く乗って」


「…あ…はい」


なんだろう。違和感がある。


なんだか変な感じがする。


具体的に何が、とは言えないけど…。


「一宮ん家ってどっちだっけ?」


「校門を出て左です」


違和感の正体を掴めぬまま、助手席に乗り込んでシートベルトをつける。


「最近、部内の雰囲気どう?」


「活発でいい雰囲気だと思いま―…あっ、右じゃなくて左…」


「んー?あぁ、間違えちゃったなぁ」


…なんか…変…。


ハンドルを握る先生の横顔が怖い。
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