「先生」って呼ばせないで
「一宮ってたしか年の離れた兄貴がいるんだっけ?」


「…そうですけど。それが何か?」


「いや?別に。通りで接しやすいわけだ」


「……」


何が言いたいんだろう。


意味が分からないまま、車はどんどん知らない道を突き進んでいく。


「あの、先生」


「体育祭の部活動対抗リレー、誰が出る?」


降りなきゃやばい。


高松先生は変だ。


早く信号に引っ掛かって…。


「先生、私の家こっちじゃ―」


「俺は一宮がアンカー走れば勝てると思ってんだよね。足速いっしょ?」


「あの!!」


キキィッ!!


大声を出したのと急ブレーキがかかったのは同時だった。


反動でシートベルトが胸に食い込んだあと背中に強い衝撃が走り、一瞬呼吸が止まる。


逃げなきゃヤバい。


ここにいたら危ない。
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