「先生」って呼ばせないで
『あ。三笠がショック受けてたぞ』


声のトーンが変わった。


わざと明るい声を作って、雰囲気を変えようとしてくれているみたい。


「…遥斗先輩に悪いことしちゃった。嫌われちゃったよね」


男の人が怖かったはずなのに、遥斗先輩だけは大丈夫だった。


やっと、一歩前進できたかなって思っていたけど…。


試合も見ずに無断で帰るなんて、印象最悪だよね。


『そんなことはないと思うけど』


「うーん…」


『三笠には話してないの?』


…話せない。


あんな恥ずかしい過去、好きな人に話せるわけない。


『もしのんちゃんが三笠に本気なら、話した方がいいと思うよ。トラウマがあること、パニックになっちゃうこと、理解してくれる人が近くにいたほうがいい』


優しく真剣な声が耳に響く。


「遥斗先輩には話せない。だから、廉くんが近くで守ってくれる?」
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