「先生」って呼ばせないで
襲われた過去がある女なんて知られたくない。


遥斗先輩の前では綺麗なままの私でいたい。


『のんちゃん。今は怜の妹として接してるけど、学校にいるときは一生徒に過ぎないから。担任としてできることしかできないと思って』


「やだよ。廉くんは廉くんだもん」


『…はぁ…。ったく…。とんだワガママ娘だな』


呆れた顔でため息をつく姿が目に浮かぶ。


『一宮の過去はよくわかった。担任として配慮できることは精一杯する』


「なんでそんな他人行儀なのー。ねー廉くんー」


無駄だと分かっているけど、敢えて昔のような甘えん坊モードで話しかけてみる。


顔が見えないから、廉くんがどう受け取ったのかは分からないけど。


『もちろん、学校以外の場所で助けられることもなんでもする。それはお前の兄貴の親友として。それでいい?』


「もっとわかりやすく言って?」


『……言わない。自分で考えろ』

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