「先生」って呼ばせないで
廉くん…。


やっぱり廉は優しいね。


昔と変わらない。


ちょっと口が悪いところは昔と違うけど、根本の優しさは変わってない。


「のんのこと、これからも助けてくれるってことだよね。“廉くん”として」


『…贔屓になると問題だから、あんまり大々的には言えないけど。まぁそういうこと』


「真面目なんだね」


『知らなかった?お前の兄貴と違って俺は真面目なの』


たしかに、廉くんのほうがテストの成績が良くて、お兄ちゃんが悔しがっていた記憶がたくさん残ってる。


あの頃はまだ小学生だったから“テスト”が何なのかよくわかってなかったけど。


「ねぇねぇ廉くん」


『なに。無駄話なら切るよ』


冷た。


ほんと、冷たいんだから。


でもね、私は知ってるよ。


そんなこと言って、なんだかんだ付き合ってくれるって。


廉くんはそういう温かい人だって。


「また電話したい。お休みの日」


『しない。教師が特定の生徒と個人的な電話なんてしてたら問題になる』


「むぅーー」


つれないなぁ。


『でたでた、末っ子甘えん坊モード。むぅなんてアニメでしか聞いたことないわ』


「言い方が悪意あるっ」


『別に悪意はない。じゃあもういい?切るよ?』
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