「先生」って呼ばせないで
「だめ!」


『なに?まだ話足りないことでもある?』


「…あるよ。ひとつだけ」


ふざけて話を逸しちゃったけど、これだけは最後に聞いておきたい。


『うん』


そんな私のトーンを察してか、廉くんのトーンも柔らかく落ち着いたものになった。


「私のこと、どう思った?過去の話聞いて、印象変わっちゃった…?」


『変わるわけないだろ。のんちゃんは何にも悪いことしてないじゃん』


「キモいとか、淫乱とか、思わない?」


『思わない。絶対に』


寸分の間も置かず即答が返ってくる。


『のんちゃん。のんちゃんは責められることなんて何もしてない。責任感じたり、罪悪感背負ったりしてるのなら、それは間違ってる』


「廉くん…」


『ホントにわかってる?のんちゃんは何も悪くないって』


じんわりと廉くんの言葉が胸に広がっていく。


温かくて、優しい。


『ツラい過去もトラウマも、無理して乗り越えなくていい。時間が解決してくれるまで、何もしなくてもいいんだよ。だから、焦るな。大丈夫だから』


廉くん…。


「ありがとう」


“焦るな”“大丈夫だから”


廉くんの言葉は心強い。


やっぱり、私のヒーローだ。
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