ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~
序章
~序章~
光と闇。表と裏。対峙するもの。相反するもの。決して交わることは許されず、それらはいつだって背を合わせながら、べつの方向を向いている。
──だとしても、仕方がないではないか。
(俺はおまえを愛してしまったから。こんな道しか示してやれないことを、どうか許してくれ)
長い白銀の髪を揺らしながら先を懸命に走る彼女〝大聖女ミラベル〟は、そんな男の心の声が聞こえたかのように振り返った。薄蒼の瞳が大きく左右に揺れる。
「グウェン……!?」
彼女の腕のなかには、産まれたばかりの小さな赤子がいた。
泣きもせず、大人しく母親の腕に抱かさっていたはずの赤子は、母の動揺を悟ったのだろう。その瞬間「うぁぁ……っ」と儚い声で泣きだした。
(泣かないでくれ、など。どの口が言えようか)
半身が引き裂かれるような思いに駆られながら、男〝大魔王グウェナエル〟はパチンと指を鳴らした。
「悪いな、ミラベル。俺が共に行けるのはここまでだ」
「そんなっ! だめよ、グウェン! あなたも一緒じゃなきゃ……っ」
遠方から、こちらを探す声と喧騒が聞こえてくる。
それに舌を打ちつつ、グウェナエルは踵を返して愛する妻のもとへ駆け寄った。
「ミラベル。──頼む。どうか、俺たちの娘を守ってやってくれ」
堪えきれなかったのだろう。涙を流す彼女の濡れた頬を労るように指先で拭い、ふたりの間に挟まれた娘ごと抱きすくめる。
「っ……グウェン」
声を震わせるミラベルの後頭部をそっと撫で、わずかに身体を離す。
こつんと額を合わせあい、グウェナエルは慈愛を込めて告げた。
「愛している。永遠に、どこにいても」
光と闇。表と裏。対峙するもの。相反するもの。決して交わることは許されず、それらはいつだって背を合わせながら、べつの方向を向いている。
──だとしても、仕方がないではないか。
(俺はおまえを愛してしまったから。こんな道しか示してやれないことを、どうか許してくれ)
長い白銀の髪を揺らしながら先を懸命に走る彼女〝大聖女ミラベル〟は、そんな男の心の声が聞こえたかのように振り返った。薄蒼の瞳が大きく左右に揺れる。
「グウェン……!?」
彼女の腕のなかには、産まれたばかりの小さな赤子がいた。
泣きもせず、大人しく母親の腕に抱かさっていたはずの赤子は、母の動揺を悟ったのだろう。その瞬間「うぁぁ……っ」と儚い声で泣きだした。
(泣かないでくれ、など。どの口が言えようか)
半身が引き裂かれるような思いに駆られながら、男〝大魔王グウェナエル〟はパチンと指を鳴らした。
「悪いな、ミラベル。俺が共に行けるのはここまでだ」
「そんなっ! だめよ、グウェン! あなたも一緒じゃなきゃ……っ」
遠方から、こちらを探す声と喧騒が聞こえてくる。
それに舌を打ちつつ、グウェナエルは踵を返して愛する妻のもとへ駆け寄った。
「ミラベル。──頼む。どうか、俺たちの娘を守ってやってくれ」
堪えきれなかったのだろう。涙を流す彼女の濡れた頬を労るように指先で拭い、ふたりの間に挟まれた娘ごと抱きすくめる。
「っ……グウェン」
声を震わせるミラベルの後頭部をそっと撫で、わずかに身体を離す。
こつんと額を合わせあい、グウェナエルは慈愛を込めて告げた。
「愛している。永遠に、どこにいても」
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