ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~
六章 ちびっこ聖女と王子の心
~六章 ちびっこ聖女と王子の心~
「城下?」
エヴラールの城に滞在し始めてから、約一週間ほど経った頃。
グウェナエルに城下へ行ってきてはと提案され、ルイーズは目を輝かせた。
「引きこもっていてはこれまでと同じだからな。せっかく魔界に来たんだ。ルゥもいろいろと見て回りたいだろう?」
「うん……! でも、いいの? ルゥのことバレたら大変じゃない?」
なんといってもルイーズは、人と悪魔の血を継ぐ者。その禁忌が公になれば、グウェナエルやルイーズはもちろん、従者たちもただではすまない。
(だからずっと隠れて生きてきたんだし……)
髪で隠している自身の両耳に触れながら、ルイーズはしゅんとした。
グウェナエルはそんなルイーズに微笑を浮かべると、その場にしゃがみこんで手を伸ばした。頬に触れ、顔と耳を覆っていた髪をそっと指先で払われる。
「問題ない。いまの魔界に、おまえの姿を知る者はいないからな。完全に人の姿をしている者も多いし、下手なことを口にしなければバレることはないだろう」
「そうなの? ベティも?」
「ああ。ベアトリスには人の匂いを消す香水を渡してあるしな。鼻が利くやつもいるが、まあ滅多なことがなければ大丈夫だ。ルゥもかけてもらうといい」
「ん、わかった」
振り返れば、後ろで控えていたベアトリスが首肯した。
(そっか。みんな人型だから、匂いさえわかんなければごまかせちゃうんだ)
ちなみに現在、従者のふたりは、エヴラールから支給された揃いの騎士服を身につけている。鎧のような堅苦しいものではなく、作りは極めてシンプルで日常的に騎士が身につけるものらしい。
エヴラール領地の悪魔騎士団に支給されているものであり、これさえ着用していればエヴラールの手の者だとわかってもらえるのだそうだ。
一方、ルイーズが身につけているのは、ワンピース型のドレスである。
星をモチーフに施された刺繍も、スカート部分と腕部分にあしらわれた繊細なレースも大変可愛らしい。色合いは藍色をベースにしたグラデーションになっている。