ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~
エヴラールが用意してくれた服のなかでも、随一のお気に入りだった。
「パパ。魔界なら、ディーみたいに耳出してもへーき?」
「ああ。むしろ出していた方が疑われにくいだろうな」
「!!」
バッと勢いよく振り向き、ベアトリスに駆け寄る。
そのまま思いきり抱きつくが、ベアトリスは微塵も揺らぐことなくしっかりと受け止めてくれた。
「ねね、ベティ。ルゥの髪、かわいくできる?」
「ええ、お任せを。これでも手先は器用な方なんです。せっかくのお出かけですし、とびきりかわいくいたしましょうか」
「やった……!」
ちなみに経験上、ディオンは論外だった。できることにはできるのだが、ルイーズのかわいさを極めだしていつまでも終わらないのだ。
(ママもへたっぴだったんだよね。楽しみ!)
ディオンはと言えば、ルイーズが自分ではなく迷わずベアトリスのもとへ走ったことにショックを受けたのか、へにゃりと獣耳を垂れて凹んでいた。
そんな彼の膝をぽんぽんとおざなりに撫でながら、ルイーズは振り返った。
「パパも行く?」
「いや、共に行きたいのは山々だがやめておこう。少々仕事が立て込んでいてな」
「んー、そっか……」
残念だが、致し方ない。
多忙であることを差し置いても、グウェナエルこそ追われる身。
かつて身に宿していた膨大な魔力を失っている分、多少は見つかりにくくはなっているらしいが、それでも顔は知られてしまっている。
エヴラールの城から出ないようにしているのも、危険を避けるためだ。
事情を理解している以上、わがままは言えない。