ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~
「エヴの領地内は争いが禁止されているし、ディオンとベアトリスがいれば大丈夫だろう。万が一なにかあっても、城下ならばすぐに駆けつけられる。俺もここから見守っておくから心配するな」
そう言うや否や、グウェナエルはパチンと指を鳴らした。
直後、どこからともなく飛んできたのは手のひらほどのコウモリだ。それも一匹ではなく数匹。大きさも大中小さまざまで、色合いも微妙に異なっている。
「こいつらは俺の使い魔だ。下級悪魔だが、よく働く」
「使い魔」
頭の上をくるくると回るように飛ぶコウモリをぽかんと見上げると、グウェナエルはそのうちの一匹を慣れた様子で指先にとめる。
「俺の封印後は散り散りになっていたはずなんだが、最近すべて戻ってきてな。優秀な部下たちだろう?」
下級悪魔は悪魔のなかでも最下層。わずかな魔力しか持たず、人型に化けることすらできない。その実態は、動物とほぼ変わらないと聞いたことがある。
「頼んだぞ、おまえたち。ああそれから、ドナ。おまえは目を貸してくれ」
グウェナエルに反応したのか、頭上に飛んでいたコウモリの一匹が「キッ!」と鳴いた。なるほど、一匹だけ瞳が金色のコウモリは〝ドナ〟という名前らしい。
この様子だと意思の疎通はできるようだ。
「まあ、そういうわけだ。心配せず楽しんでこい、ルゥ」
目を貸す──それがどんな仕組みかはわからないが、グウェナエルのことだ。
使い魔の目を通して遠方の景色を見る魔法でもあるのだろう。
もはや驚きもせず、ルイーズは素直に受け入れた。
「ルイーズさま。よろしければ、リュカもご一緒させていただいても?」