ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~
七章 ちびっこ聖女と重なる異変
~七章 ちびっこ聖女と重なる異変~
翌日、ルイーズはリュカや従者たちと共にふたたび城を出た。
だが、今日の目的は前回のような城下での買い物や探索ではない。城下から少し離れた場所に流れているという、ジルダ川の観察だ。
「あっ、あった。あれだよね?」
「うん。立ち入り禁止の柵が立てられてるけど、あの川だよ」
民が誤って近づかないようにするためだろう。ジルダ川の地畔には木組みの柵がずらりと設えられていた。悪魔文字は読めないけれど、あきらかに警告文のようなものが書かれた看板も立っている。
「ここに、毒素が混じってる?」
ルイーズたちはぎりぎりまで柵のそばまで寄り、水の様子を見てみる。
──が、見た目では特別変わった様子はない。流れも至極穏やかで濁りもなく、水底が透き通って窺えるほどには澄んでいた。
「少なくとも、ザーベス荒野のように空気中まで毒素で汚染されているわけではなさそうですね。水自体も見た目には現れていないですし」
「んね。ちょっと想像とちがったかも」
ディオンの言う通り、大気も澄んでいる。エヴラールの領地内だけあって土壌自体の色も浅めの茶色で異常は見られないし、近隣には植物さえ生えているほどだ。
あの柵がなければ、いつも通りに水を汲んで飲んでしまってもおかしくはない。
「……んー。あのお水、採ってこれないかな」
「木樽は持ってきましたが、姫さまはいけませんよ。自分が採って参りますので、ここでお待ちください」
「でも、だいじょぶ?」
「この程度でしたら、肌が水に直接触れなければ問題ないかと」
危険なことをさせてしまうのは心苦しいが、ルイーズやリュカにはできないことだ。