ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~
とはいえ、この〝頑固〟は絶対的にエヴラールからの遺伝だ。そう断言できるグウェナエルは、正直どっちもどっちだと思っていた。
「──ルイーズだがな。診察した医師の見立てによると、あの体調不良は環境の変化によるものらしい」
「環境の、変化?」
ルイーズを診た医師は、グウェナエルが王であった頃から懇意にしていた者だ。
名をオーブリーという。
グウェナエルの帰還には驚いていたが、オーブリーはすぐに患者──ルイーズのことを優先していた。そういう仕事一筋なところが好ましく、彼への信頼度は高い。
「ルイーズは短期間であちこち移動していたからな……。その目まぐるしい環境変化が幼い身体には受け止めきれなかったんだろう」
「じゃ、じゃあ、悪い病気とかではないってことですか?」
「ああ。まあ、ようするに疲れだな。しっかりと休んで体調を整えれば、すぐに元気になる。だからそう自分を責めなくていい」
その瞬間、リュカの両目からぶわっと大粒の涙が溢れ出した。
よほど心配だったのだろう。安心したらまたもや涙腺が壊れてしまったらしい。
(純粋で、優しくて、責任感が強い。だというのに、変なところで自信がない。わかりにくいが、そういうところもエヴによく似ているな)
リュカの部屋に着き、扉の前でリュカを降ろす。そのまま地に片膝をついて小さな王子と目線を合わせながら、グウェナエルは静かに告げた。
「リュカ。おまえが父親に認められたくて足掻いているのは知っているが、これだけは言っておくぞ。──王になりたくば、自分の力量を見誤るな」
「りき、りょう……?」