ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~
エヴラールの前を通り過ぎ、そのままグウェナエルは廊下を進む。二歩ほどあけて後をついてくるエヴラールは、なにやら悩んでいるようだった。
(親子揃って……まったく手がかかる。頑固というのも考えものだな。俺としてはこやつの方がよっぽど拗らせていると思うが)
頑ななほど感情を表情に出さないゆえ、非常にわかりにくい。そんな男だからこそ、仲間内からはあまりよくない噂を立てられたりもしていた。
まあ、当のエヴラールは、まったく気にした様子もなかったが。
こうと決めたら、いかなる障害があろうが貫き通す。そんなタチゆえに、グウェナエルに向ける忠義も忠誠も、彼のなかでは決して揺らがないものであったのだろう。
あえて口には出さないが、その忠義のもと律儀に王座を守り続けてきてくれた彼の想いには、グウェナエルも感謝していた。
「……ルイーズさまのご容態は?」
「なんとも言えんな。正直、これは俺も予想していなかった」
ぐったりとした娘の姿を見たときを思い出して、顔が自然と険しくなる。
正直、自身が封印されるときよりも恐怖を覚えた。
どんな悪魔との力比べの際だってあんなにも肝が冷えたことはない。
「ルイーズのなかに眠る悪魔の力が暴走している、とオーブリーは言っていた。身体が受けいれて馴染むのを待つしかなく、外的にできる処置はないらしい」
「しかし、あんな小さな身体では体力も限界があるのでは」
「ああ、オーブリーもそれを案じていた。あの高熱にいつまで耐えられるか……。本当に力が馴染むかもわからない以上、気は抜けないと」
きっかけは環境の変化。リュカに言ったことは、決して嘘ではない。