ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~
だが、すべてを打ち明けたわけではなかった。真実を伝えれば、きっとリュカはもっと自分を追い詰めてしまうだろうから。
「魔界自体が包容する魔力に晒されたことで、体内に眠っていた悪魔の力が刺激されたんだろう。ディオンの話では、これまで聖光力こそ使えたが、闇魔法はいっさい使えなかったと言っていたしな」
人と悪魔の子。禁忌に触れる存在だ。前例がない。オーブリーも対処法を探ると言っていたが、おそらくこれは周りがどうにかできる問題ではないのだろう。
「……エヴ。悪いが、俺は一度例の件から離れるぞ」
「承知しております」
「手伝ってやりたいのは山々だが、いまの俺はルイーズのことしか考えられん」
それから、と足を止めて、グウェナエルは振り返った。
「おまえも仕事ばかりしていないで、もう少しリュカと向き合え。息子を抱きあげられる時期など一瞬なんだ。三年後には絶対に後悔すると断言できるぞ、俺は」
「っ……余計なお世話です」
「俺は失った五年間を毎日悔いているんだ。なにせ、生まれた直後に別れてしまったからな。歩けるようになったルイーズ、初めて言葉を発したルイーズ、走れるようになったルイーズ……そのどれも、俺はそばで見守ってやれなかった」
ミラベルの記憶のなかで、すくすくと成長していくルイーズを見た。
もしも、ミラベルとの別離以外の道があったなら。
もしも、あのとき封印されずにふたりで逃げ延びることができていたら。
そうしたら、ミラベルも病を患って死ぬことはなかったのかもしれない。
そうしたら、両親揃って娘の成長を見守っていくことができたかもしれない。