ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~

 ──そんな可能性を考えるたびに、胸の奥が軋むのだ。

「……たとえ大魔王の力をもってしても、過ぎ去った時間だけは二度と戻すことはできない。なればこそ〝いま〟を見失えば先々の未来さえも失うんだ、エヴ」

 さすがに言い返せなかったのか、エヴラールがぐっと押し黙ったのがわかった。

 ふたり分の足音が、静寂が落ちる城の廊下を鳴らす。

 やがて、グウェナエルの耳にひどく掠れた沈痛な声が届いた。

「……重々、承知しておりますよ。我が主」

< 152 / 193 >

この作品をシェア

pagetop