ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~
「いまですか? 深夜の二時頃、といったところでしょうか」
「……んぅ。ふたりとも、ちゃんと、寝て。ルゥはだいじょぶ、だから」
ふたりとも、心配のしすぎでよく眠れていないのだろう。目の下にはうっすらとクマが浮かんでいた。いくらか憔悴しているようにも見える。
「……寝ていますから、大丈夫ですよ」
「ええ。いまは他者の心配などせず、ご自身のことに専念されていてください」
でも、と言いたかった。けれど、ルイーズが口を開く前に、突然ディオンが耳をぴくぴくっと揺らして振り返る。扉の方を見て、わずかながら相貌が眇られた。
(なに……?)
その警戒の意味を知ったのは、それから数秒後のことだった。
ノックもなしに、ルイーズの部屋の扉がガチャン!と押し開かれる。
「っ──失礼!」
夜も更けきった時間だというのに、いっさいの配慮がない乱暴な開け方だ。
思わずビクッとしたルイーズをベアトリスが反射のように引き寄せ、そんなふたりを背にしながら、ディオンが部屋へ飛び込んできた者を睥睨する。
「このような時分になにごとですか。エヴラールさま」
ディオンの言葉になおのこと驚きながら、ルイーズは飛びこんできた彼を見た。
(……魔王、さま?)
少なくともルイーズが知る彼は、このように突飛な行動はしない。
歩くときでさえほぼ足音が聞こえないくらい静かだし、これまでも入室の際には必ずノックをしてくれていた。
だというのに突然なぜ、と困惑した次の瞬間。動揺を浮かべ、らしくもなく息を切らしたエヴラールの口から放たれたのは、予想もしない問いかけであった。
「ここに、リュカは来ていないか……!?」