ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~

 結果、リュカの姿はどこにも見当たらず、最後に藁にも縋る気持ちでルイーズの部屋へとやってきた──。

「本当に、いないのですか? 最後にリュカさまのお姿を見た者は?」

「今朝朝食を運んだときに、侍女が。だが、その際に昼食と夕食はいらないと断られたらしい。お腹が空いたら自分で取りに行くから、部屋にも入ってこないでほしいと──」

「そのまま夜に?」

「……もともと、こういうことはよくあったのだ。あの子は世話をされることを嫌がる節があって、自分のことはなんでも自分でやろうとする。だから侍女にも好きなようにさせていて──だが、そのせいで、いないことに気づけなかったと」

「……そのようなこと有り得るでしょうか? たしかに彼はしっかりしていますが、まだ六歳ですよ。保護者の手が離れるのは早すぎるのでは?」

 ぐっ、とエヴラールが顔を強ばらせた。

 そのとき、ふたたび部屋の扉が開いた。入ってきたのはグウェナエルだ。

「その通りだ、ディオン。実際、さきほど侍女を問い詰めたら白状したぞ。──彼女はリュカから、自分がいないことを内緒にしてほしいと頼まれていたそうだ」

「はっ……!?」

「数少ない身内を疑いたくない気持ちはわかる。だが、おまえらしくないな。エヴ?」

 グウェナエルはひとつ嘆息すると、呆然と立ち尽くすエヴラールの横を過ぎ、ルイーズのもとまでやってきた。大きな手がそっと頭に触れる。

「大丈夫か、ルゥ」

 体温を確認するためか、置かれた手はそのまま下方へ滑り、首筋へ当てられた。ひんやりとしていて気持ちがいいが、いまはそれどころではない。

「ん……。でも、リュカ、どこ行ったの?」
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