ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~
「わからん。城内や近辺、城下付近……ほかにもいたるところに使い魔たちを飛ばしているが、見つからない。見当さえつけばいいのだがな」
使い魔とは、おそらく例のコウモリの下級悪魔たちだろう。以前と同じように、彼らの目を通して遠方の景色を見ているのかもしれない。
「昨晩から、どうにも様子はおかしかったのです。夕食の際もぼうっとしていて、食事もあまり喉を通らないようで……。問えばルイーズさまが心配なのだと言っていましたが、いったいなにを真剣に考え込んでいたのか……」
「……ちがうよ? 魔王さま」
ルイーズははふはふと荒い呼吸をしながらも、エヴラールを見る。
「リュカが、ぼうっとするときはね。考えてるときじゃ、ないの。なにか、大事なことを悩んでるとき。考え終わって、そのあとの決断が、できないとき」
「……え?」
「だって、考えてるときは、ずっとしゃべってるもん。ひとりで、ぶつぶつ」
考えているときと、悩んでいるとき、そして決断の手前にいるとき。
──似ているかもしれないが、リュカの場合ははっきりと異なるのだ。
考えがまとまった結果の末に訪れた悩み。
それを実行するか否かの段階で、彼はよりいっそう己の世界に引き込もる。きっと小さな頭のなかで必死にシミュレーションしているのだろう。
実行したときのリスクや、可能性。得られる成果。その他諸々。
水不足問題について真剣にぶつかるリュカをそばで見ていたからこそ、ルイーズはそんな彼の〝癖〟に気がついていた。
「あのね、魔王さま」
つらく重怠い身体を叱咤して、ルイーズは上半身を起こした。