ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~

「リュカはね、頭がいいの。すっごく。きっと魔王さまが思ってるよりも、ずっと」

「は……?」

「──だってリュカは、天才だから」

 引っ込み思案で、自信がなくて。自分の考えをなかなか口にしない。

 そのせいで、だれもそのことに気がつかないだけ。

 リュカはこの城で、いつもひとりで、いろいろなことを考えていた。どうすれば〝王子〟たる存在に相応しくなれるのか、必死に考えて、努力していた。

 あの年齢で遊びもせず図書室の本を読み漁っているのも。

 こっそりと魔法の練習をしているのも。

(全部全部、努力だよ。ねえ、気づいてあげて。たくさん頑張ってること)

 リュカは、たしかに天才だけれど。

 同時に、努力の天才でもあるのだ。

「ルゥ、わかるよ。きっとリュカはね、いつか、パパみたいな大魔王になる」

「っ──!!」

 エヴラールが息を呑み、グウェナエルもわずかに目を見開いた。

「でも、ね。いまはまだ、子どもだから。それを忘れないで、魔王さま」

 ルイーズ自身の言葉。だが、まちがいなく前世のルイーズの心が重なって放たれたものだった。その場の誰もがルイーズの言に圧され、身を硬くする。

(どれだけ考えてもわからないことはあるし、危険なことを危険だと思わなかったりする。そういうときに、止めてくれる大人がいないといけないのに……)

 リュカには、いなかったのだ。

 ルイーズにとってのディオンやベアトリスのような存在が。

 彼の足場を固めて、危険から守り、行きたい場所へ導いてくれる──。

 そんな〝大人〟が、いなかった。

「リュカにはまだ〝お父さん〟が必要なんだよ」
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