ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~
やりきれない思いでぽつりと呟いて、ルイーズはグウェナエルを見た。
「……ね、パパ。ジルダ湖って、ここから近い?」
「ジルダ湖か? 正規のルートで行くのなら遠回りしていかねばならないし、相応に時間はかかるが……ふむ。ここからならば、森を突っ切っていけなくもないな」
まさか、とグウェナエルが眉間に深い皺を刻む。
「うん。いないかな?」
「待っていろ。いますぐ、一番近い使い魔に向かわせる」
グウェナエルはそう言うや否や、さっと瞼を伏せた。
空気にしんとした静けさが走る。
ルイーズたちは緊張した面持ちで見守った。エヴラールはやはり表情にこそ現れていないが、その瞳はいつもとは比べものにならないほど揺れていた。
やがて、グウェナエルがはっと両眼を開く。
「見つけた。ジルダ湖の周囲を……ん? なにか拾っているようだが」
「なぜよりにもよってあの湖に……!」
「なんにせよ、さすがにまずいな。行くぞ、エヴ!」
転移しようとしていることに気づいたルイーズは、とっさに離れようとするグウェナエルの服の裾をくんっと引っ張った。
「パパ、ルゥも連れてって」
「っ、なにを言ってる。おまえは身体が……」
「だいじょぶ、だからっ。ルゥ、一緒に行く! 連れて行ってくれなきゃ、パパ、嫌いになる! ぜっこー、する!」
ぎゅうううっと両手で服を強く握りしめて訴えた瞬間、グウェナエルはまるで雷にでも撃たれたかのようにふらついて天を仰いだ。
「おま……なん、なんてことを言うんだ」
「お願い、パパ。一生のお願い」
うるうると潤んだ瞳でルイーズはグウェナエルを見つめあげた。