ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~
「わたしも……わたしもよ、グウェン。たとえ世界に認められなくても、世界中が敵になったとしても、あなたをずっと、あなただけをずっと愛してるわ」
「ああ。俺もだ」
禁忌に触れながらも想いを通わせてしまった代償は計り知れない。
こうなることなど最初からわかっていた。それでも、この想いだけはごまかしようがなかったのだ。だから、グウェナエルとミラベルは互いの手を取る選択をした。
後悔はない。そうして少しでも愛する者と過ごせたのだから。
「おまえに認識阻害魔法をかけて、ディオンとの合流地点まで飛ばす。そうしたら、とにかく人に見つからぬ場所へ行け。闇魔法は永続しないから、なるべくはやく。可能な限り、遠くまで逃げろ。わかったな?」
「……ええ、わかってる。あなたは?」
「俺はあいつらを食い止める。難を脱したら、すぐに追いかけよう」
「本当に?」
「ああ」
「絶対よ。もし帰ってこなかったら、わたしの方から突撃しにいくんだから」
「くく、それは楽しみだな。だが、大丈夫さ。きっとまた会える。俺たちが想い合う限り、この縁は途切れぬことなく繋がっているからな」
否、きっとこれが最後の時間になるだろうと心のなかでは思いながら。
それでも、今この瞬間、彼女に希望を失わせたくはなかった。
「さあ行け、ミラベル。俺たちの娘を──ルイーズを頼んだぞ」
言うや否や、グウェナエルは闇を司る転移魔法を行使する。
立ち尽くす彼女の足元に魔法陣が展開され、魔法が瞬く間に彼女を包み込んだ。
「グウェン」
姿が消える寸前。名を呼んだミラベルと視線が絡みあう。
「あなたに出逢えて、幸せだった」