ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~
一章 ちびっこ聖女と従者の大冒険
~一章 ちびっこ聖女と従者の大冒険~
『よく聞いて、ルイーズ。この〝聖女の睡宝〟とあなたの聖女の力があれば、きっと封印されているパパを助けられるわ。だからいつか……本当に、いつかね? もし、ママが死んじゃったときは──』
母親であるミラベルに、そう話をされたのは、およそ一年前のこと。
ルイーズがまだ、四歳になったばかりの頃のことだった。
いま思えば、そのときにはもう自身の死を予見していたのだろう。
だから彼女は、聖女としての最後の力をすべて〝聖女の睡宝〟という特別な宝石に閉じこめて、ひとり娘であるルイーズへと託した。
この睡宝が、自身の亡き後、ルイーズを救ってくれるものになると信じて。
(でも、ママは本当に、こうなるってわかって言ったの……っ?)
ルイーズは現在、狼姿の魔獣──従者ディオンの背に乗って、とにかく広大なザーベス荒野を駆けていた。
視界に映るのは、巨大な花々と湿地。そして、暗雲がはびこる天空の稲妻。
ピシャアアアアアン!!
(っ、また雷……。そのうち、落っこちてきそう)
常に禍々しい様相を保ち続けている空一帯を見上げ、ルイーズは身を震わせた。
「大丈夫ですか、姫さま」
そんなルイーズの震えを感じ取ったのだろう。ふいに立ち止まったディオンが、首だけ振り返って心配そうに尋ねてきた。
「ん、だいじょぶ。……でも、キリがないね?」
「ええ。この荒野の迷宮も、もしかすると本当に果てなどないのかもしれません。行くも戻るもザーベス。寝ても起きてもザーベス。ザーベスザーベスザーベス……いい加減、この毒花にはうんざりしてきますよ」