ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~
三章 ちびっこ聖女と封印されし大魔王
~三章 ちびっこ聖女と封印されし大魔王~
ベアトリスの衝撃発言から数日後。日を重ねて休み、ようやく完全に体調が回復したベアトリスに連れられて、ルイーズたち一行は地下室を後にした。
「はてさて……意識が朦朧としていたから、辿り着けるかは不安だな」
「覚えてない?」
「大丈夫ですよ。これでも騎士ですから、彷徨うにもちゃんと対策しています」
ベアトリスはそう言うと、あたりを見回してなにかを探し始めた。
ルイーズとディオンが顔を見合わせるなか、ややあって地面に目的のものを見つけたらしい。あった、とホッとしたように呟き、彼女はその場にしゃがみこむ。
「なにがあったの?」
「これですよ、ルイーズさま。わたしの髪の毛です」
「かみのけ?」
ベアトリスの手元を覗き込むと、地面から二本の赤い髪が芽を出していた。
「…………」
なんと言えばいいのかわからず、ルイーズはただ黙ってベアトリスを見る。
「そんな可哀想なものを見るような目をしないでください、ルイーズさま。自分の辿ってきた道がわかるよう、一定の感覚でこれを埋めていたんです」
「かみのけを……?」
「ええ。ほかに手放せそうなものがなにもなかったので」
「それで自身の髪を目印にする者なんて、きっとあなたくらいでしょうけどね」
ディオンのつっこみに、ルイーズは心のなかで何度も頷いておく。
だが、ベアトリスは意に介した様子もなく、しれっとした顔で立ち上がった。
「なにはともあれ、この目印を辿っていけばいずれ大魔法が封印されている場所に着くはずだ。なんだか瑣末な石碑のようなものだったが、これはいい目印になると思って目の前に髪を埋めてきたからな」
「パパが封印されてるとこに??」
つい、つっこまずにはいられなかった。
「パパ?」
「パパラッパという虫のことですよ。ええ、大魔王の封印場の前に現れると噂の!」
怪訝そうに首を傾げたベアトリスに、ディオンが食い気味に答える。
(そんなの聞いたことないよディー……!)
だらだらと冷や汗を流しながら、ルイーズは心のなかで悲鳴をあげた。己の失態のせいとはいえ、どう考えても無理がある答えだ。