ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~
「まあな。しかし──転移先をまちがえたか? 俺の知る景色ではないが」
ディオンとベアトリスは空中ではなく地に降り立ったようだ。遥か下の方から「姫さまご無事ですかっ」と心配そうにこちらを見上げている。
「どのあたりだ、ここは」
「え。さっそく迷子?」
「いや、そんなことはない。魔界は俺の庭……だった」
なんとも不安を助長するような言い方で答え、グウェナエルは一度大きく翼を羽ばたかせる。一息に上空まで舞い上がると、執念深く周囲を確認した。
(わ、すごい)
上空からだと魔界の様子がより窺えた。
ルイーズも倣ってあたりを観察してみる。
最初に目に止まったのは、薄暗い世界のなかで唯一煌々とした光を放つ場所。ずいぶん離れてはいるが、暗い魔界を照らすようなそこに目が引き寄せられる。
「パパ、あそこなに? 明る──」
思わずその先を指さしながら尋ねた、そのとき。
ふいにそちらの方向から、豪速でなにかがこちらに飛んでくるのが見えた。
ルイーズがぎょっとしてグウェナエルにしがみついたのと同時、すっと双眸を眇めたグウェナエルは軽く左手を掲げた。直後、凄まじい衝撃波が襲う。
「──っ!?」
ぶつかったのは、闇を丸めて生み出したような巨大な弾丸だ。直径にして自身より大きいそれを、グウェナエルはその場から微動だにせず片手で受け止めていた。
だが、気を抜く暇もなかった。次いで何発も飛んできたのである。