大嫌いなキミに愛をささやく日
そうして、ピッと電話を切るお父さん。

隣では、煌人が「凜の行きそうな場所って」と頭をひねっていた。



「鳳条くん、俺が今から地図を送るから、アドレス教えて。俺はここに残る」

「……俺が一人で行って、いいんですか?」



さっき真さんにヒドイ事を言いました――

と正直に反省する煌人を見て、お父さんはまだ小さな煌人の肩に、手を置いた。



「正直……こんな小童(こわっぱ)に愛娘を頼みたくないよ。だけど、同じ年齢だからこそ、分かり合えるものがあるだろう?」



それは、大人である俺が立ち入れない領域だったりするし――とお父さん。



「凜はとても素直で良い子だけど……俺に全てを預けてるわけじゃないしね」

「どういう……」

「完璧にご両親の代わりになるのは難しいって、そういう事だよ」

「!」



いつも自信満々な顔をしているお父さんの、少し気弱そうな笑顔。

それは、どこか少し悲しそうにも見えた。



「だからね、癪(しゃく)だけど……君一人でいきなさい。

そして凛に会って、しかるべき事をするんだよ」
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