大嫌いなキミに愛をささやく日
「今までナンパを断られてきた事はあったけど、は、墓参りだってよ!」
「おい笑うなよ!可愛い子ちゃんが泣きそうだぞ!」

「いや、別に泣きそうなんかじゃ……」



と思った、その時だった。



バサッと、私の頭に、何やら痛い物がのしかかる。

だけど仄かにいい匂いがしてきて……。

深呼吸をすると、良い匂いが、私の体の中をグルリと回る。

すると、体の中の悪いモノが、吹き飛んで行くような気がした。

良い気持ち……



「じゃなくて、なんか痛い!そして重い!

ちょっと誰なん、」



誰なんですか――と、そう言おうとした時。



「え」



驚くことに、私の目の前に、バラの花束を持った煌人が立っていた。

椅子に座る私を守るように、私に背を向けて、不良に立ち向かってくれている。



「あ、煌人……?」

「ん。遅れてごめん」

「遅れてって……」



そもそも約束なんてしてないけど――


という言葉を最後まで言わせてくれなかった煌人。

恐れを知らないのか、不良相手に満面の笑みで近づいていく。



「俺がこのままあなた方をホームから落としてもいいのですが、いいんですか?もう電車来ますよ?それに、困りましたね。ここの駅は古くて監視カメラもないみたいで……もしも今落ちたら、あなた方はきっと自殺扱いになるでしょうねぇ」
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