大嫌いなキミに愛をささやく日
「お?どした?」



ニコッと笑ってくれる煌人。

私は身じろぎしながら、モゾモゾと。

そう言えば煌人に抱きしめられたままだった事を思い出して、腕の中から逃げる。



「ふぅ、暑かった……」

「おい、お前なぁ」

「でも……」

「?」



この時、ふと。

予行演習をしたいなって思った。

本音を言う、予行演習。

たまには、ね。

自分の気持ちに、素直になろう。



「さっきの煌人には、すごくドキドキした……」

「っ!」



へへと、笑っている私と、顔を赤くして目を点にしている煌人。



「お前……その不意打ちは、ズルすぎるって……っ」

「ふ、不意打ちってなに……」

「いや、もういい。何もかも、もういい」



そう言いながら、寒いときに両手を温めるみたいに。

煌人は口を両手で隠す。

そして「あー」と声を漏らした。



「なに?煌人」
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