大嫌いなキミに愛をささやく日
「はあ!?」



ガタンと椅子をひっくり返して立ち上がる俺に、泡音ちゃんは「ほら、あそこ」と窓の外を指さす。

見ると、本当に凛が下校している真っ最中だった。

しかも……



「校門にいた男に手を上げて、しかも一緒に帰ってるぞ?」

「うん。今日は先輩と一緒に帰るって言ってたからね」

「――先輩?誰それ??」

「ちょ、マジな目をしないで鳳条くん」



さっき決まったことらしくて、私も詳しくは知らないんだよ――と呑気に泡音ちゃんが喋る中。

俺は自分の鞄に手をかけて、急いで教室を後にした。



「泡音ちゃん、ありがとね」



その言葉を残して。

ビュンと疾風のごとくいなくなった俺を見て、泡音ちゃんが一言だけ呟く。



「最後の一言で、多少残念な鳳条くんが全て消し飛ぶからズルいよねぇ。やっぱ女子キラーだわ」



そんな褒め言葉のようなものを、泡音ちゃんが呟いていたとは知らない俺。
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