大嫌いなキミに愛をささやく日
下駄箱で靴に履き替え、かかとが中に納まりきらないまま、凛の後ろ姿を追いかけた。

そして、そのこげ茶の長い髪にたどり着く。



「凛!」

「煌人、どうしたの?」

「ど、どうしたも、こうしたも!」



ハァハァと肩で息をする俺に、凛は迷いなく近づいた。

そして「すごい汗」と言って、テイッシュを一枚さし出してくれる。



「テイッシュ……」

「仕方ないじゃん。ハンカチは今日ずっと私が使ってたんだし」



汚い物を煌人に渡すわけにはいかないもん――と凛。



「お前、俺の事を気遣って……」



なんだよ凛、なんだかんだ言って俺の事を考えてくれてんのかよ。


そう思うと、少し感動してしまう。

次の言葉を聞くまでは。



「だって使用後のハンカチを渡したら”変なにおいがする”とか”ここ湿ってるぞ”とか。何かイチャモンつけられそうだもん」
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