大嫌いなキミに愛をささやく日
煌人はちょっと変わったところがあって、自分が社長の息子だという事を自慢したがらない。


むしろ、こっちから家柄の事でイジると……こんな感じに、途端に不機嫌になったりする。


それでも、一般人の私から見たら「煌人=お坊ちゃま」を切り離せないわけで。

こうやって、たまに地雷を踏んでしまう。



「ねぇ……怒った?」



おずおずと聞くと、煌人は頷く。

その顔には、やっぱり「不機嫌」の三文字が浮かんでいた。



「俺が家の事を言われるのが好きじゃないって知ってて、わざと、」

「いや、わざとではないよ。無意識」

「余計にタチ悪いわ」



だから――と煌人は言った。


ガタッと席を立って、私の方を向いて。

そして私の手首を捕まえて、不敵に笑う。



「怒ったから、これから凜を困らせようと思う」
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