愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
断られるつもりで臨んだお見合いが
柔らかそうなチョコレートブラウンの前髪が額に斜めにかかり、凛々しい眉の下には髪と同色の瞳が艶めいている。

やや垂れた目尻は甘い印象だ。

人目を引く美形の彼は藤江朝陽(ふじえあさひ)――出会ってまだ三か月半ほどの成美(なるみ)の夫である。

四歳年上の彼はその目に蠱惑的な光をともし、華奢な成美の体を引き寄せて顎をすくった。

(待って、心の準備が……!)

二十六歳の大人になっても成美はウブで、思わずたくましい胸を押し返そうとした。

すると湯上りの温かい肌に触れてしまい、鼓動が跳ね上がる。

慌てて引っ込めようとした手を握られ、唇を奪われた。

「んっ」

反射的に目をつむり、唇を硬く引き結ぶ。

ついばむような優しいキスを繰り返した朝陽が、数秒して顔を離した。

「もっと深いキスがしたいんだが。嫌ならしないけど」

「嫌じゃないです。でも、あの……」

「まだ完全に心を許してくれないか。俺は前から君を知っているけど、君からしたら出会って間もない男だよな。仕方ない」

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