愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
プロポーズを受け入れて以降、朝陽は毎週デートしてくれて、そのたびに『キスしていい?』と聞いてきた。

婚約関係にあるので拒むつもりはないのだが、直接的に聞かれたら恥ずかしくて頷けない。

『もう少し待ってください。心の準備ができるまで……』

『残念』と言いつつも朝陽は笑っていたので、もしかすると真っ赤になる成美の反応を楽しんでいたのかもしれない。

この挙式ではコーディネーターから事前の流れの確認をされた時に、キスは頬にと話してある。

人前でのキスに抵抗のある外国人は珍しくないそうで、コーディネーターからキスはどうするかと聞いてくれたのだ。

朝陽の手によりベールが上げられ、成美の視界が鮮明になる。

チャペルの白壁も海も空も朝陽の端整な顔も、なにもかもが眩しい。

肩に手をかけられ、斜めに傾けた彼の顔が近づいてくると、成美の鼓動は最高潮に高鳴った。

(落ち着いて。頬に軽く唇があたるだけだから。バーラウンジで手の甲にされたのと、きっとそんなに変わらない)

息のかかる距離まで近づくと、朝陽の片側の口角がニッとつり上がった。

(あっ!)

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