愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
唇同士が軽く触れ、成美の目がまん丸になる。

瞬時に顔に熱が集中し、入国時に空港スタッフから首にかけてもらったハイビスカスのレイ並みに赤くなっていそうな気がした。

チュッと音を立てて唇を離した朝陽が、してやったりと言いたげな顔で囁く。

「式の最中に気を逸らすからだ」

つまり、お仕置きの意味でキスしたのだろうか。

それとも彼以外について考えさせまいという意図があるのかもしれない。

その狙い通り、家族について心配する余裕はなくなり、人生初のキスに成美は心をときめかせた。

(唇って柔らかいのね。もう一回、してほしい。人前では困るけど……やだ、私ったらすごく恥ずかしいこと考えている。藤江さんと一緒にいる時の私は、少し変)



夢のような結婚式が終わり、水平線に日が落ちて夜が始まる。

満天の星空の下、テラス席で波音を聞きながらのディナータイムだ。

ステージが設けられていて、迫力のあるファイアーダンスに続いて優雅なフラダンスが披露される。

昨日は静かなレストラン内で食事したので、成美は初めてのハワイアンショーを他の宿泊客とともに楽しんだ。

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