愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
マイルール壊し
秋風の吹く十月末、ハワイ旅行から帰ってきてひと月半ほどが経った。

片側三車線の広い道沿いには、帰路の途中と思われる大勢の人が駅に向かって進んでいる。

仕事を終えた成美も人波の中にいて、並んで歩く梢と話していた。

「そのキャメルのコート、新しいね。わっ、あのブランドの新作じゃん。旦那さんに買ってもらったの?」

「はい。私はお洒落センスがないので、主人が選んでくれました」

「主人! 言ってみたいわ。お金持ちの旦那さん、羨ましい。なんでも買ってくれるんでしょ?」

成美のクローゼットには新しい洋服がぎっしりと納められている。

朝陽が日常的にプレゼントしてくれるので、毎日のように新しいものを身につけていた。

決して自慢しないが、梢に目ざとく見つけられて羨ましがられる。

自分の稼ぎで購入したものではないので胸を張れず、どんな返しをしていいのかわからない。

(大したことないと謙遜はできない。どれも上質で私にはもったいないものばかりだから。ありがとうございます、でいいのかな?)

成美が困っていても梢は構わず、興奮気味に続ける。

「住んでいるところもすごいんでしょ?」

違うと言えずに頷いた。

ハワイ旅行から帰ってきた翌週、新居に引っ越して朝陽と一緒に暮らし始めた。

港区の新築高層マンションの最上階で、メゾネットタイプの5LDKだ。

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