愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
梢が言うには少女漫画にそういう設定がよくあるらしく、漫画のタイトルをいくつか挙げられた。

「私、子供の頃に両親から漫画を禁止されて、読んだことがないんです。なので、よくわからないんですけど、お嬢様ではありません。生まれた時から庶民です」

「じゃあどうして!? どうやったらそんないい男と出会えるのか教えてよ!」

足を止めた梢に両肩を掴まれて揺さぶられた。

後ろを歩いていた人が、急に立ち止まったふたりを迷惑そうに見て避けて進む。

成美は慌てて梢の手を引いて建物側に寄ると、心配して顔を覗き込んだ。

「梢さん、どうしたんですか?」

梢から切羽詰まったような必死さを感じた。

今までは羨ましがられるだけで、こんな風に詰め寄られたことはなかったからだ。

すると梢が悔しそうに顔をしかめる。

「昨日、彼氏にフラれたの。他に好きな女ができたんだって。二年も付き合って、こっちは結婚まで考えていたのにひどくない? だから絶対あいつよりいい男を捕まえて結婚してやるんだ」

「そうだったんですか。つらい思いをされたんですね」

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