愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
いい加減な仕事をする社員はいらないし、指示を聞かない者も不用。

しかし見合いの席で成美たち母娘に自身の仕事について簡単に説明した際に、社員との話し合いを大切にしているようなことを言ったのも嘘ではない。

大学を卒業後、一社員として本社で数年働いて最後の一年は管理職を経験した。

その後に父に命じられてこの会社の経営陣に加わったのだが、若い朝陽に仕切られるのが我慢ならない古株社員、何人かと衝突した。

朝陽の考えた戦略や新しい分野への挑戦、高い売り上げ目標に対し、現場を知らない若造のたわごとだと陰で囁かれていたのも知っているし、直接意見しに来た管理職の社員もいた。

その者たちひとりひとりとじっくり話し合い、朝陽の経営方針に納得した社員は残し、なおも反抗的な者には退職を勧めた。

朝陽にとってはたったそれだけのことだが、若い社員らは特に逆らえばどうなるかわからないと怖れているようだ。

(誰が優しいって?)

妻に何度かそのように言われた。

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