愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
電子錠を開錠して中に入る。
広さ十二畳の朝陽の執務室は機能性重視で、観葉植物や絵画などの飾りは一切ない。
左の壁側にL字形の執務机があり、右のブラインドを下げた窓側に六人掛けのミーティングテーブルを置いている。
必要書類はほとんどデータ保存しているので書類ラックはひとつだけで、それも半分しか埋まっていない。
休憩用のソファもなく、ここで昼食を取る時は執務机で仕事をしながらだ。
脱いだコートをコート掛けにかけてから、執務椅子に座る。
二台のパソコンを起動させ、朝の日課のメールチェックから始めた。
要不要を即座に判断しながらファイル保存や破棄、返信をする。
十分で二十通ほどを処理したら、ドアがノックされた。
誰が来たのかはわかっているので、無言で電子錠のスイッチを操作し解錠した。
「おはようございます」
入室して一礼し、こちらに歩み寄るのは秘書の田島だ。
朝陽より二歳年上の細身の男性で、真面目な七三分けのビジネスヘアに角ばったレンズの眼鏡をかけている。
細い目に口角が下がった薄い唇で、いつも愛想がない。
彼は一年ほど前に朝陽が自ら面接して採用した。