愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
それまでは二十八歳の女性が朝陽の主担当秘書を務めていたのだが、恋愛面で興味を持たれていると気づいたため辞めさせた。

朝陽にとって会社は戦場で、熱っぽい目で見られても煩わしいだけだ。

田島は事務処理能力が高い一方で、コミュニケーションは苦手なようだ。

いつも笑顔がなく、必要事項しか口にしない。

来客の対応時にはもう少し愛想よくしてもらいたいところだが、無駄話を振ってくる前の秘書にうんざりしていたため、その無口さも気に入っていた。

執務机を挟んで向かいに立った田島が、タブレットを手に淡白に話す。

「本日のスケジュールのご確認をお願いします」

「ああ」

これも毎朝のことで、朝陽はマウスを操作して田島のタブレットと同期しているスケジュール表をパソコン画面に表示した。

「九時から経営会議があります。終わり次第――」

経営会議は月に一度、重役が顔を合わせて行う。

その後、経理担当者を連れて銀行に行き、銀行の担当者と預金管理についての定期確認を行う。

経理任せにしないのは不測の事態防止のためだ。

< 185 / 282 >

この作品をシェア

pagetop